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え、恋愛って何?あの2人 [歴史エッセイ]

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 アンとヘンリーは、出会ってから秘密結婚をするまで、肉体関係がなかった
という。いったいなぜだったのだろう。

 アンの姉妹メアリーは、以前ヘンリー8世の愛人だった。ブーリン家の家族
たちは、メアリーが美貌だったので「あわよくば」とかなり期待していたのに、
短時間で捨てられてしまって、出世や財産など、大した見返りもなかったことが
ショックだった。

 普通なら2度とチャンスが回ってこないところを、なんと!もう1人の娘アンが、
ヘンリー8世の浮気心をくすぐった。今度こそ失敗できない。ブーリン家は一家を
挙げて気を引き締める。アンの母エリザベス・ハワードは、娘にこう言い聞かせた
かもしれない。

「国王は体を許してしまうと、すぐに飽きてしまう方なんですよ。メアリーをごらん
なさい。なんと惨めで可哀想なのでしょう。ああならないよう、注意なさい」

 母エリザベス自身もヘンリー8世のお手つきとなって捨てられた過去があった。
 あまりにも短時間だったし体面が悪いせいか、ヘンリーは8世は「手などつけてい
ない」と言い張っていたが、とうてい信じられない。

 アンにしてみれば、母も姉妹ももてあそんで捨てたヘンリー8世には、内心憤懣が
あったのだろう。できれば、ひっぱたいてやりたかったかもしれない。
 もちろん国王に手などあげたら、命が幾つあってもたりないので、丁重に拒否した。

 それからのヘンリー8世の醜態ぶりは多すぎて書き切れない。
 ラブレターは書く、プレゼントする、歌は唄う、すがりつく、まあ、いろいろと
ムキになっていく。やがて時間が経つにつれ、ヘンリーはアンを口説くのに、別の
理由を付け加えるようになった。結婚して、正統な後継者を作ることだ。
「アンよ、結婚しておくれ!(ヘンリー8世)」
 アンは、「それならお付き合いぐらいはいたします」という態度で接した。

 ラブレターの内容もだんだん激しくなっていく。「そなたの乳房にキスしたい」
なんて書いているので、アンはキスや体を触らせるぐらいは、許したのかもしれない。
 相変わらず肉体関係は許さなかったが。

 石井美樹子という研究家は、アンはヘンリーを愛していて、恋愛関係にあった、
という。アンの本心など後世の人間が断定などできないかもしれないが、仮にアンが
愛人として強い自負があったとしたら、あるいは愛されることで満足するような真の
恋愛関係があったとしたら、当時の開放的な性風俗からすると、肉体関係がある方が
自然だろう。

 けれどアンは、王妃になれるまで、ヘンリーが心変わりする可能性を避けるよう
行動した。ヘンリーにとっても、困難きわまる本妻との離婚と再婚の過程で、肉体
関係は最後のごほうびと化していた。
 私はやはりアンにとっては王妃の座という、野心が優先だったと思う。
 ヘンリーにとっても肉体関係を求めることから始まり、跡継ぎをもうけることへと
目的が変わった。
 これだけ強烈な目的意識がある2人が、まっとうな恋愛関係だったと、とうてい思えない。


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こんなに女が強くなったのに? [歴史エッセイ]

 今も昔も私は英国史に対して疑問に思う点がある。

  ヘンリー8世の第1王妃キャサリン・オブ・アラゴンは政治的な才能もある賢妻だった。
 夫のヘンリー8世が国を離れた間摂政として英国を統治し、1513年9月侵略してきたスコットランドを撃退した。時のスコットランド王ジェームス4世は、英国軍に迎撃され、戦死してしまったという。
 国中がキャサリン王妃を絶賛した。
 ところが、夫のヘンリー8世は、そんな妻を捨てて若い女に走り、離婚してしまった。

 武勲をあげた王妃であっても「男の子を産まない」という理由で王妃の座を奪われてしまったのだ。
 別に子供ができなかったわけではなかった。男の子は生まれたにはうまれたが、赤ん坊のうちに亡くなってしまった。結果として娘1人しか育たなかった。

 そしてアン・ブーリンという新しい女性が王妃に迎えられた。
 キャサリンが王妃でいる間に愛人にして、結婚を約束していた相手だという。
 当時は大反対され、アンに批判が集まったが、現在ではなぜかアンの方を好む人々がいる


 そこには「妻は当然男子を産むべき」「男子こそ跡継ぎ」という発想が、16世紀の価値観として今もまだ理解し、共感されているということだろうか。キャサリンは当時40才だったが、一方アンは20代の若さだった。

 未だに「男は若い女が好き」「子供を産めない女はダメ」という価値観が歴史解釈でさえまかり通っている現実 それはフェミニズムが盛んな現代にあって、ダブルスタンダード(裏表)と言えはしないだろうか?


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